【必見】高齢者の転倒を防ぐ!理学療法士が教える転倒予防の評価4つとカットオフ値とは?

健康について

高齢者の転倒とは?

高齢者の転倒は、健康上のリスクや生活の質に重大な影響を与える問題であり、世界的に見て、転倒による怪我は高齢者の死亡原因の一つになっています。

転倒の原因にはさまざまな要因がありますその要因を理解することが、転倒予防の鍵です。

高齢者の転倒リスクを評価するためには、身体機能の評価や日常生活動作の評価、環境の評価などがあります。

これらの評価を通じて、個々のリスク要因を特定し、適切な対策を立てることができます。

そこで今回は転倒予防の重要性、原因について解説し、理学療法士がおすすめする転倒予防のための評価4つと転倒につながるカットオフ値をお伝えしたいと思います。

転倒予防の重要性

転倒を予防することは骨折を未然に防ぎ、それによる入院や寝たきりを回避する重要な手段です。さらに、入院中の患者に対する転倒予防の効果的な実施は医療事故を防止する役割も果たします。

転倒リスクのスクリーニングにより、高いリスクを持つ個人を特定することで、運動指導の内容をより効果的に調整できます。

地域包括ケアが介護予防を重視する今日、これらの取り組みの重要性はますます高まっています。

転倒は外的要因や内的要因によって引き起こされ、バランスを崩し、身体の基底面(Base of Support: BOS)から体重の中心(Center of Gravity: COG)が逸脱することで発生します。

若い頃は簡単に一歩を踏み出せますが、高齢になるとその反応が鈍くなり、瞬時に行動することが難しくなります。

転倒の内的因子

転倒の内的要因には、以下のような要素があります。

•立位バランス能力の低下

•歩行能力の低下

•認知機能の低下

•感覚機能の低下

•様々な疾患

•過去の転倒歴

•筋力の低下:筋肉の弱さや筋力の低下は、身体の安定性やバランスを損なう可能性があります。

•骨密度の低下:骨粗鬆症などの骨の健康状態が悪化すると、骨折リスクが高まります。

•薬物の副作用:特定の薬物はめまいやふらつきの副作用を引き起こし、転倒のリスクを増加させることがあります。

高齢化に伴う身体の変化:加齢に伴い、視力や聴力の低下、関節の硬化などが転倒リスクを増加させる要因となることがあります。

これらの要因は個人によって異なり、複合的に影響を与えることがあります。

転倒の外的因子

転倒の外的要因には、以下のような要素があります。

•床面の状態:滑りやすい床や柔らかい床、絨毯の毛足が長くて引っ掛かる床など。

•通路の障害物:家具や電気コードなどが通路に置かれていると、それらにぶつかったり絡まったりして転倒のリスクが高まります。

•階段や段差:段差がある場所や階段がある場所では、その段差や階段を正しく認識できない場合に転倒の危険があります。

•履物:履物の適切な選択が重要であり、滑りやすい靴や不適切なサイズの靴などが転倒の要因となることがあります。

•照明:暗い環境では段差や障害物が見えにくくなり、転倒の危険性が高まります。

•薬の副作用:特定の薬物はめまいやふらつきの副作用を引き起こし、転倒のリスクを増加させることがあります。

健常の成人であれば、環境や課題に応じて姿勢を変化させながらバランスを保ち、動作を実行することができます。

しかし、高齢者は各関節の可動域が減少し、筋力が低下し、歩幅が短くなったり前傾姿勢になったりする特徴があります。

そのため、環境に適応しながら柔軟に姿勢を変化させることが難しくなり、バランスを崩してからの修正が難しくなります。

転倒予防の基本戦略は、これらの転倒リスク要因を明らかにし、修正することにあります。

転倒予防のためのスクリーニングテストの目的

1.転倒リスクのある対象者を特定すること。

2.転倒リスクのある対象者を詳細に評価し、個別の危険因子を把握すること。

3.個別の転倒予防介入を行うこと。

4.介入後の再評価を行い、予防対策を調整すること。

バランステストは転倒予防のスクリーニングテストで重要な役割を果たします。スクリーニングテストは、簡便でありながら高い精度で転倒の危険性のある対象者を特定することが求められます。Tiedemannらによれば、単一のテスト項目では高い判別性を得ることが難しく、複数の評価項目を組み合わせることで判別性を向上させる必要があります。

したがって、スクリーニングテストの判別性を高め、転倒予防に関する十分な情報を得るためには、異なる評価項目を組み合わせた評価バッテリーが必要です。

Berg Balance Scale(バーグ・バランス・スケール)

バランスの評価に使用される標準的なテストです。

このスケールは、立位姿勢でのバランスや動作の安定性を測定し、転倒リスクの評価に役立ちます。

このテストは14の項目からなり、さまざまな動作やポジショニングを含みます。

例えば、立位での姿勢保持、座位からの立ち上がり、片足立ち、身体の回転などが含まれます。各項目は0から4のスコアで評価され、合計スコアが高いほど、バランスや動作の安定性が高いことを示します。

Berg Balance Scaleは、高齢者やリハビリテーションの対象者など、転倒リスクの高い人々の評価に広く使用されています。このテストは、転倒リスクの早期発見や個別の介入計画の立案に役立ちます。

 テスト項目が多いために測定に時間がかかりスクリーニングテストとしては使用しにくいという意見もある。転倒予測のカットオフ値は45点である。

Timed Up&Go

Timed Up & Go(TUG)テストは、バランスや移動能力を評価するための簡単なテストです。このテストでは、被験者が椅子から立ち上がり、3メートル先のマーカーまで歩き、折り返して椅子に戻るまでの時間を計測します。

具体的な手順は以下の通りです:

1.椅子に座っている被験者に、「Go」という合図を出します。

2.被験者は椅子から立ち上がり、歩いて3メートル先のマーカーまで移動します。

3.マーカーに到達したら、その場で180度折り返して椅子に戻ります。

4.椅子に座るまでの時間を計測します。

TUGテストは、特に高齢者やリハビリテーションの対象者など、日常生活での動作能力や転倒リスクを評価する際に広く使用されます。テストの時間が短いほど、被験者の移動能力やバランスが良好であると見なされます。

Podsiadloらの報告では

神経学的に問題のない健常高齢者では 10 秒以内に可能

20 秒以内であれば屋内 ADL 自立・外出可能

30 秒以上であれば起居動作やADL に介助を要する

Shumway-Cookは

転倒予測のカットオフとして13.5秒としています。

日本整形外科学会は

運動器不安定症を判断する基準として、TUGテストのカットオフ値を「11秒以上」としています。

Functional Reach test

Functional Reach(機能的リーチ)テストは、身体のバランスと安定性を評価するための一般的なテストです。このテストでは、被験者が立位で立ち、肩幅の幅で壁に向かって伸びます。

被験者は両腕を伸ばし、肩の高さで手をフィストにして壁に触れるか、または手の指先ができるだけ遠くに伸びるまでを測定します。

具体的な手順は以下の通りです:

1.被験者は立位で立ち、肩幅の幅で足を広げます。

2.被験者は両腕を肩の高さで伸ばし、手の指先をフィストにして壁に向かって伸ばします。

3.壁に触れるか、または手の指先が最も遠くまで伸びた時点で手を伸ばした距離を測定します。

Functional Reachテストの結果は、手の伸ばし距離で示されます。これは被験者のバランスと安定性を評価する指標となります。通常、手の伸ばし距離が長いほど、被験者のバランス能力が高いとされます。

 カットオフ値は15cmとされる。

虚弱高齢者の場合(Thomas et al., Arch Phys Med Rehabil. 2005)

18.5cm未満で転倒リスクが高い 

脳卒中片麻痺患者の場合(Acar & Karats, Gait Posture 2010)

15cm未満で転倒リスクが高い

パーキンソン病患者の場合(Dibble & Lange, J Neurol Phys There 2006)

31.75cm未満で転倒リスクが高

年代到達移動距離
22~2942.71±0.78
303941.01±0.73
404940.37±0.53
505938.08±0.53
606936.85±0.53
707934.13±0.54

10m歩行テスト

10m歩行テストは、高齢者やリハビリテーションの対象者など、歩行能力を評価するためのテストです。このテストでは、被験者ができるだけ速く10メートルの距離を歩き、その時間を測定します。

具体的な手順は以下の通りです:

1.被験者はスタートラインに立ちます。

2.「スタート」という合図で、被験者はできるだけ速く10メートルの距離を歩きます。

3.10メートルの距離を歩き終えた時点で、時間を計測します。

4.測定された時間を記録します。

10m歩行テストの結果は、歩行速度や歩行能力の指標となります。通常、より速い時間が良好な歩行能力を示し、遅い時間は歩行能力の低下や歩行障害を示唆する可能性があります。

このテストは、高齢者の日常生活での歩行能力やリハビリテーションの進行を追跡するために使用されます。

10mを何秒で歩くことになるのか、歩行速度を秒数に変換したので参考にしてみてください。

0.4m/s未満:10mを歩くのに25秒以上かかる

移動が屋内歩行にとどまることが多い

0.4〜0.8m/s:10mを12.5秒~25秒の間の時間で歩ける

一部で屋外歩行可能

0.8 m/s以上:10mを12.5秒以内で歩ける

屋外歩行自立(ショッピングモールの移動など含め)

サルコペニアの診断基準にも10m歩行速度が「0.8m/sec未満」という項目があります。

まとめ

転倒予防は、高齢者の安全と健康を守るために重要な取り組みです。

今日紹介した評価方法を通じて、個々のリスク要因を特定し、適切な対策を講じることができます。

皆さんも家族やご自身のために、日常生活での注意点を意識し、安全な環境を整えていきましょう。

転倒予防には我々の協力が必要です。一緒に高齢者の健康と安全を守りましょう!

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