仙腸関節障害は、仙腸関節の機能不全や炎症によって引き起こされる疾患で、多くの場合、腰部や下肢に痛みをもたらします。
治療家向けにこの障害の特徴的な所見、疼痛誘発テスト、および保存的治療法について基本的な情報を提供します。
この記事は一般的な情報を目的としており、専門的な診断や治療計画の代わりとなるものではありません。
仙腸関節障害の特徴的な所見
仙腸関節障害は、腰痛の一常見原因であり、特に動作中や長時間同一姿勢を続けた後に症状が顕著になることがあります。痛みの局在は主に腰部から臀部にかけてであり、場合によっては下肢に放散することもあります。
疼痛誘発テスト
仙腸関節障害は、特に腰部や下半身に痛みを感じる際に疑われる状態です。
以下では、この障害の診断に役立ついくつかの疼痛誘発テストについて説明します。これらのテストは、痛みの原因を特定し、仙腸関節障害かどうかを判断するために用いられます。
One Finger Test(ワンフィンガーテスト)
このテストでは、患者に最も痛む場所を一本の指で指さしてもらいます。指摘された場所が仙腸関節周辺、特に後腸骨棘(PSIS)付近である場合、仙腸関節障害の可能性が高まります。痛みがやや広範囲にわたる場合でも、特定の範囲内であれば仙腸関節障害を疑うことが推奨されます。
仙腸関節のストレステスト
仙腸関節の疼痛が疑われる場合、以下のストレステストが行われます。
Gaenslenテスト(ゲンスレンテスト)
患者は背臥位になり、非検査側の下肢を膝まで抱え込みます。検査者は検査側の大腿部を押し込みながら、骨盤を後傾させて固定します。このテストで仙腸関節痛が誘発されると陽性とみなされます。
Patrickテスト(パトリックテスト)
患者は背臥位になり、検査側の脚を「4」の字に組みます。検査者が下方へ圧力を加えることで、仙腸関節の痛みの有無を確認します。このテストは、骨盤が固定されている状態とそうでない状態の両方で行われ、股関節痛との鑑別が可能です。
Newtonテスト変法(ニュートンテスト変法)
患者は腹臥位となり、検査者が検査側の仙腸関節に圧迫を加えます。このテストによって疼痛が誘発されれば、仙腸関節障害を示唆します。
これらのテストを実施する際には、骨盤の固定と非固定の状態で疼痛の有無を確認し、それによって仙腸関節障害と股関節痛の鑑別を行います。特に非固定状態で疼痛が誘発される場合、仙腸関節障害が原因である可能性が高いと考えられます。
FABERテスト (Flexion, ABduction, External Rotation):患者を仰向けにして、痛みを評価するための体位をとります。
これらのテストは仙腸関節に特有の痛みを誘発することが目的で、他の腰痛の原因との鑑別に役立ちます。
保存的治療
仙腸関節障害の保存的治療には、以下のアプローチが含まれます:
- 物理療法:仙腸関節の動きを改善し、周囲の筋肉を強化することでサポートを提供します。
- マニュアルセラピー:関節の動きを促進し、痛みを緩和するために手技療法を行います。
- 痛み管理:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの薬物治療を利用して、急性期の痛みを管理します。
まとめ
仙腸関節障害は、その診断と治療において専門的な知識と技術を必要とする複雑な疾患です。
この記事で提供された情報は、一般的なガイドラインとして役立ちますが、個々の患者の詳細な評価と個別の治療計画の作成には、適切な専門家との連携が不可欠です。
症状が見られる場合や治療に関するさらなる助言が必要な場合は、適切な医療提供者に相談してください。
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